2022.10.29 [イベントレポート]
「香港を象徴するビジュアルモチーフを探していました」10/28(金) Q&A:アジアの未来『消えゆく燈火』

消えゆく燈火

©2022 TIFF
オープニング・レッドカーペットにて アナスタシア・ツァン監督(右から2番目)、サヴィル・チャンプロデューサー(左から1番目)、セシリア・チョイさん(左から2番目)、ヘニック・チョウさん(右から1番目)

 
10/28(金) アジアの未来『消えゆく燈火』上映後、アナスタシア・ツァン監督(監督/脚本)、サヴィル・チャン(プロデューサー)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
アナスタシア・ツァン監督(以下、監督):私の作品をご覧になっていただきましてありがとうございます。気に入っていただけたら嬉しいです。質問がありましたらなんでも喜んでお答えいたしますので、どうぞ気兼ねなくお聞きください。
 
サヴィル・チャンさん:サヴィちゃんです。この映画のプロデューサーです。皆さん、こんばんは。このような形で日本人の観客の方にお会いすることができるのをとても嬉しく思っています。
 
Q:監督のデビュー作だと伺って非常に驚いています。なぜ香港のネオンという文化に着目して作品を作られたのかお聞きしたいです。
 
監督:今回この映画を作るにあたりまして、私はまず家族の一員を誰か失った家族のことを描きたいと思いました。そして、家族の喪失感、そういったものを象徴するような、なにかビジュアルモチーフというものを探していました。それも、香港を象徴するようなものをと思いまして、色々と考えたのですが、なかなかアイデアが浮かびませんでした。そんなある日、私は道を歩いていて、点滅しているネオンを見ました。そして、これだ!と自分の頭の中でなり、クリックしました。それでそこから、香港を象徴するネオンサインのことをリサーチし始めました。あともう一つ付け加えたいことがあります。80年代90年代の香港映画には、多くネオンサインが登場します。ですけれども、ネオンサインをテーマにした映画というものはこれまでありませんでした。ですから私は、自分の映画の中でぜひこのネオンサインにスポットライトを当てたいという風に思いました。
 
Q:デビュー作でシルヴィア・チャン、サイモン・ヤムといった大物俳優の演出はなかなか大変なのではないかと思いながら観ていたのですが、そのお二人の演出で苦労されたことなどがあればお聞きしたいです。
 
監督:今回私は初めて映画の監督をしたのですけれども、ラッキーなことにお二人に脚本を大変気に入っていただけて、快く作品に出演してくださいました。お二人とも大変素晴らしく良い方々で、もちろん経験も豊富です。それぞれ演技のスタイルというものは異なるのですが、一緒に共演が始まるとそこにはもう奇跡が来ると思いました。二人の演技を見ていますと、本当にぴったりで、私の初監督作品としては本当にラッキーで、お二人が本当に名優ですから、1回か2回撮影すればそれでOKが出るので、そこのところも大変助かりました。そして事前打ち合わせで全て私の意図を組んでくださいまして、実際に撮影がスタートすると、すごくスムーズに運びました。
 
Q:劇中で、ロリポップキャンディー越しに夜景を見るところ、画面を彩ったネオンサインの変型の一つだと思うのですが、どういうところから思いついたのかお聞きしたいです。
 
監督:かなり映画がお好きなんですね。実はあのシーンはクシシュトフ・キェシロフスキという私の好きな監督の作品、『トリコロール』のワンシーンを参考にしています。作中でビー玉やガラスを何度も見るシーンがビジュアルの面でも美しいと思いました。このように違った形で映像を作りたいと思い、作品の中でロリポップを使ったり、水に映る映像を撮影したりなどいろいろ駆使したつもりです。
 
Q:プロデューサーの方に質問です。こういった作品、プロジェクトを考えるときにそれなりにお金がかかると思うんですけど、主役のお二人の名前ですぐにお金が集まるのか、そうではなかったのか、お金を集めるのにどういった苦労があったのかお聞きしたいです。
 
サヴィル・チャンさん:この作品は政府からの資金で作られました。コンペがあったのでそこでこの作品が採用されて政府からの助成金でこの作品が作られるようになりました。このコンペは新しい、新人の監督を育成、サポートしていくという意図があるので有名な俳優さんも率先して協力してくださいます。その理由も、みんなが香港映画をもっと賑わうものにしたいと思っているからです。正直いうとこの映画を撮る前はサイモンさん、シルヴィアさんが怖い人だったらどうしよう、どんな人たちなのだろうと構えていたのですが、実際お会いしたらとても素晴らしく優しい方たちだったので、私たちはとても安堵しました。また是非機会があれば一緒にお仕事をしたいと思っています。
 
Q:香港出身としてとても楽しませていただきました。映像もノスタルジーを感じました。悲しい物語の中にユーモアがちりばめられていて素晴らしいと思いました。シルビアチャンさんが演じた役の若いころの中国語にアクセントがあったとのことなのですが、当初からシルヴィア・チャンさんを想定して脚本を書かれたのでしょうか。また、いろんな技術を会得して撮影に臨まなければならなかったということですけどこの準備期間というのはどのくらいかかったのでしょうか。
 
監督:この映画があなたにとって香港の思い出を彷彿とさせるものになったのであれば何よりです。まず最初の質問ですが、正直脚本を書いている最中、撮影ができるとは思ってもいませんでした。ですから特定の俳優さんを想定して書いたわけではないのですが、このコンペで受賞が決まり撮影できるようになってからどんな女優さんにアプローチできるかなと考えるようになりました。その時に思い浮かんだのがシルヴィア・チャンさんでした。彼女は素晴らしい経験豊富な女優さんであるとともに監督、脚本もやられています。なので、シルヴィア・チャンさんに役をお願いすると同時に彼女から脚本や監督について学ぶことがあるのではないかと思いました。そうして彼女は私のファーストチョイスになったわけです。
2つ目のご質問についてこの映画はネオン管をあげるシーンがたくさんあるので俳優さんたちは技術を上げなければいけなかったです。特に“レオ”役のヘニック・チョウさんはネオン管を最後まで作れるように私も含めて今回の作品の技術アドバイザーしてくださった方に色々リサーチを数か月かけて学んでいきました。サイモン・ヤムさんも数週間ほどかけて技術を身に着けていただきました。

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