本年度審査委員

コンペティション部門国際審査委員

審査委員長

ジュリー・テイモア

©Marco Grob

ジュリー・テイモア

Julie Taymor

演劇・オペラ演出家 映画監督

演劇・オペラ演出家、映画監督。1974年、トーマス・J・ワトソン奨学金(ビジュアル・シアター部門)を得て、東欧、日本、インドネシアを訪問。 4年間のアジア滞在中に仮面舞踊団「Teatr Loh」を結成した。同カンパニーは“Way of Snow”と“Tirai”の2作品を携えてインドネシア全土で上演、 その後、米国でも上演された。1992年、小澤征爾指揮によるサイトウ・キネン・オーケストラのため、ストラヴィンスキー作曲「エディプス王」でオペラを初演出。 エディプス役にフィリップ・ラングリッジ、ヨカスタ役にジェシー・ノーマンが起用された。映画版の監督も務め、同作はサンダンス映画祭でプレミア上映、モントリオール国際芸術映画祭で審査員賞を受賞した。 1993年に各国でテレビ放送され、エミー賞と1994年国際クラシック音楽賞の最優秀オペラ作品賞を受賞している。監督作はほかに、ジュリアン・ムーアとアリシア・ヴィキャンデル主演『グロリアス 世界を動かした女たち』(20)、アンソニー・ホプキンス主演『タイタス』(99)、サルマ・ハエック主演のアカデミー賞受賞作『フリーダ』(02)、ゴールデングローブ賞およびアカデミー賞ノミネート作品『アクロス・ザ・ユニバース』(07)、ヘレン・ミレン主演の『テンペスト』(10)、『夏の夜の夢』(14)などがある。舞台演出作「ライオンキング」は25年にわたり、南極大陸を除く全大陸の20か国、100都市以上で上演された。全世界興行収入は歴代の記録を塗り替え、トニー賞に2度輝いた。1998年に初演された日本版「ライオンキング」は、ブロードウェイのオリジナル作品に続く初の国際版であり、四季劇場[春]にて初演された。その後、大阪、福岡、名古屋、札幌でロングラン公演を行い、大成功を収め、日本での累計公演回数は1万3000回を突破。現在も前人未到の記録を更新し続けている。その他の舞台作品では、クライヴ・オーウェン主演の「Mバタフライ」、アン・ハサウェイ主演の“Grounded”、“Spider-Man: Turn Off the Dark”、“The Green Bird”、“Juan Darien: A Carnival Mass”(演出を含むトニー賞5部門ノミネート)などがある。オペラでは、「魔笛」(メトロポリタンオペラ、フィレンツェ五月音楽祭)などがある。マッカーサーフェロー天才賞受賞者。

メッセージ
芸術は私たちを混沌の中から導き出し、道を切り開く道標です。暗い劇場の中、目の前で明滅する映像は、私たちを深く引き込み、孤立した単一の自己存在から引き離します。映画館で作品にひたってください。 そこは、私たちがまったく知らないこと、知っていると思っていること、個人的に経験したことの境界をともに越えさせてくれる宮殿です。他人の人生や愛に没入して、鼓舞され、苦悶させられてください。 第35回東京国際映画祭のコンペティション部門国際審査委員長として来日できることを、とても光栄に思います。

審査委員

シム・ウンギョン

シム・ウンギョン

Shim Eun-kyung

俳優

1994年5月31日生まれ。韓国ソウル出身。9歳でデビュー。日本でもリメイクされた主演映画『サニー 永遠の仲間たち』(11)、『怪しい彼女』(14)が韓国で大ヒットを記録。日本では映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(19)で第34回高崎映画祭 最優秀主演女優賞、映画『新聞記者』(19)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、第74回毎日映画コンクール女優主演賞、第29回映画祭TAMA CINEMAFORUM 第11回TAMA映画賞 最優秀新進女優賞を受賞。近年ではNHK「群青領域」(21)で日本のドラマ初主演を務めるほか、映画『椿の庭』(21)、『七人の秘書 THE MOVIE』(22)に出演。

メッセージ
第35回東京国際映画祭の審査委員になることを、とても光栄に思っております。
自分が選ばれたことで、映画は皆をつなげてくれるものだと改めて考えました。
私は中学生の頃に映画というものに目覚め、その限りない世界に夢中になって、永遠に続けられる力を感じました。そして映画を見るたびにワクワクしました。
慎重に審査員を務めますが、そのワクワクする気持ちを今回の映画祭で皆さんとともに感じ、楽しめたらそれが何よりです。
色々な国の素晴らしい作品に出会う機会になると思います。ぜひ興味を持って参加して頂けると嬉しいです。
何卒宜しくお願いいたします。
ジョアン・ペドロ・ロドリゲス

©Diego Sanchez

ジョアン・ペドロ・ロドリゲス

João Pedro Rodrigues

映画監督

映画監督。ポルトガル出身。8歳の時に父親から双眼鏡を与えられ、鳥類学者になることを決意する。今も常に双眼鏡を持ち歩き、自然の中に分け入って鳥を観察する。
古典からドキュメンタリー、実験映画まで多様な映画史を反映しながら、ジェンダーと人間の欲望を、あらゆる形で、時には見えない形で探求する作風で知られる。監督作はカンヌ、ヴェネチア、ロカルノ、トロント、ベルリンなど世界の主要な映画祭でプレミア上映され、賞を獲得。2016年にはパリのポンピドゥー・センターで、ロドリゲスとパートナーのジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタの功績を称え、全作品回顧上映とインスタレーション展示が開催された。

メッセージ
東京国際映画祭の新プログラミング・ディレクターの市山尚三氏とは2017年にウラジオストクで開催されたパシフィック・メリディアン映画祭で審査員仲間としてお会いしました。世界で悲劇が起きている今だったら、そこで出会っていたでしょうか。
私の初長編『ファンタズマ』(00)を撮る直前の1999年にパートナーのジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタと初めて日本を訪れて以来、幸運にも何度か訪問しています。
今回の審査員としての招待はとても光栄であり、入選した作品を見るのがとても楽しみです。
柳島克己

柳島克己

Yanagijima Katsumi

撮影監督

1972年、三船プロダクションに入社。『cfガール』(97/監督・橋本以蔵)で初めて映画撮影を担当。主な作品として『3-4X 10月』(90/北野武監督)、以後北野武監督とは現在まで16作品を撮影担当。ほかに『空がこんなに青いわけがない』(93/柄本明監督)、『バトル・ロワイアル』(00/深作欣二監督)、『GO』(01/行定 勲監督)、『ディア・ドクター』(09/西川美和監督)、『ライク・サムワン・イン・ラブ』(12/アッバス・キアロスタミ監督)、『聖の青春』(16/森 義隆監督)、『いとみち』(22/横浜聡子監督)など、映画撮影作品数は70作品を超える。撮影賞としては日本アカデミー最優秀撮影賞(02、04)、横浜映画祭撮影賞(96、09)ほか。

メッセージ
映画祭は数多くの映画の中から、多くの関係者が携わり厳選されたものが披露される場でもあります。
その中のコンペティション部門は、作品を選ぶという酷な難しい問題に直面します。
これまで映画の審査員は何度か担当しましたが、いつも思うのは「どうして引き受けてしまったのか」という後悔の念です。
一方、色々な審査員との出会いや、作品についての論争の楽しさ、新しい才能や感情にインパクトを打つ作品を応援し評価する面白さもあります。
「映画が持っている表現する力」との出会いを楽しみにしています。
マリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル

マリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル

Marie-Christine de Navacelle

元アンスティチュ・フランセ館長

フランス国内外の公的文化施設を率いるチーフキュレーターとして活躍。1976年から88年までパリのポンピドゥー・センターのキュレーターとして従事し、ドキュメンタリー映画祭“Cinema du Reel”を立ち上げた。88年から95年まで外務省映画部門を統括し、シネマテーク・フランセーズ、カンヌ映画祭、ユニフランセの理事に任命された。96年から02年まで東京と横浜の日仏学院(現:アンスティチュ・フランセ)のディレクター、その後03年までカンボジアのフランス文化施設のディレクターを務めた。03年から05年までパリの国立図書館の映画部門を統括した。「Frederic Wiseman(原題)」やエマニュエル・リヴァの未発表の写真を含む「HIROSHIMA 1958」など、映画に関する複数の編著書がある。

メッセージ
多くの人がNetflixやディズニープラスなど様々なプラットフォームを通して、自宅でオンデマンドで映画を見る昨今ですが、映画祭は、映画館で質の高い上映に触れ、新作や旧作を発見し、映画監督やプロデューサー、映画評論家、そして映画ファンたちと出会って、意見を交わすことができる最高の場所のひとつであり続けています。しかも、楽しい雰囲気の中で。
映画祭に参加することは特別な経験ですが、審査員の一員になることは、さらに深い交流のチャンスとなります。作品選定は大きな責任を伴うものですが、市山尚三氏の映画に対する愛と鋭い審美眼を知る私は、彼がどんな作品を選んだのか非常に興味があり、それを見る機会があることを嬉しく思っています。
映画は情熱の対象にもなります。ロベール・ブレッソンの『湖のランスロ』(74)の日本初上映時、若者たちが東京のBunkamuraの前で何時間も並んでいた光景を覚えています。市山氏や蓮實重彦氏、冨田三起子氏らの協力を得て、私が企画したブレッソン全作品回顧上映として、東京国際映画祭「シネマプリズム」部門と東京日仏学院で上映されたときのことです。まだ存命だったブレッソンは自分の全作品が日本で観られることをとても喜んでいました。

アジアの未来 審査委員

斉藤綾子

斉藤綾子

Saito Ayako

明治学院大学文学部芸術学科教授/日本映像学会会長

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)映画テレビ学部大学院博士課程修了、PhD(映画学)。明治学院大学文学部芸術学科教授。専門は映画研究、フェミニズム批評など。共編書に『映画と身体/性』(森話社、2006年)、『映画女優 若尾文子』(みすず書房、2003年)、『男たちの絆、アジア映画』(平凡社、2004)、『可視性と不可視性のはざまで 人種神話を解体する 1』(東京大学出版会、2016年)など。

ソーロス・スクム

ソーロス・スクム

Soros Sukhum

プロデューサー

タイのインディペンデント映画界において最も活躍しているプロデューサー。現在、タイの新世代の映画作家をサポートしている。タイ文化省からシラパートーン賞(映画・ビデオ部門)をタイ人プロデューサーとして初めて授与された。2020年には、アジア太平洋地域の映画における優れた功績により、国際映画製作者連盟(FIAPF)賞を受賞。カンヌ映画祭に出品されたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『MEMORIA メモリア』や『十年 Ten Years Thailand』の共同プロデュースを務めた。

西澤彰弘

西澤彰弘

Nishizawa Akihiro

東京テアトル株式会社 編成部長

東京生まれ、東京育ち。1992年に東京テアトル株式会社に入社。銀座テアトルシネマ、シネヴィヴァン六本木、シネセゾン渋谷他での勤務を経て、2004年から本社編成部に配属、東京テアトルの映画館の編成を行う。現在、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、他の映画館の番組編成を行う。2012年より、日本での未公開の作品を集めた映画祭「未体験ゾーンの映画たち」などの企画、プログラミングを行う。

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