2022.10.29 [イベントレポート]
イニャリトゥ監督&深田晃司監督、第35回東京国際映画祭「黒澤明賞」授賞式に出席
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受賞の喜びを語ったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督(右)と深田晃司監督

第35回東京国際映画祭の「黒澤明賞」授賞式が10月29日、東京・帝国ホテルで行われた。黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出したいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託したい映画人に贈られる賞で、今年14年ぶりに復活。授賞式には今年の受賞者であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と深田晃司監督が出席し、喜びを語った。

イニャリトゥ監督は、2000年に『アモーレス・ペロス』で長編映画監督デビューし、同作が第13回東京国際映画祭でグランプリを受賞。菊地凛子が出演した『バベル』(06)の一部を日本で撮影したほか、09年には東京国際映画祭コンペティション部門の審査委員長を務めており、日本との縁が深いアカデミー賞監督だ。

キャリアの原点ともいえる東京国際映画祭に、黒澤明賞の受賞者として参加することになり、「このような意義深い賞を受け取り、光栄ですし、深田監督とご一緒というのも大きな喜びです」と挨拶。黒澤作品の魅力は「人間性の複雑さを映画で描いている点」だと語り、『羅生門』『生きる』『乱』『七人の侍』がそれぞれ、自身の『アモーレス・ペロス』、『BIUTIFUL ビューティフル』『レヴェナント 蘇えりし者』に影響を与えていると明かした。

なお、自伝的な最新作『バルド、偽りの記録と一握りの真実』は、本年度ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出され、東京国際映画祭のガラ・セレクション部門でも上映されたばかり。12月16日のNetflix独占配信に先駆け、11月18日から一部劇場で公開される。

『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞し、国内外で注目を浴びる存在となった深田監督は、芸術性の高い野心作に挑み続けると同時に、コロナ禍の影響で経営危機に陥る劇場支援のためのクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」を立ち上げるなど、若手映画監督としての枠を超えた活動を展開。最新作の「LOVE LIFE」は今年、第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映された。

トロフィーを手に「これからも頑張れという叱咤の意味合いがあると思っているので、今後も頑張っていきたい」と抱負を語った深田監督は、10代の頃に黒澤監督の『野良犬』を見て、「本当に面白くて、自分が生まれる前に作られた映画にものめり込むようになった」と回想。その後、映画業界に進むが「特に2000年代以降は、映画監督も俳優も不安定な雇用状況に身を置かれている」と指摘し、「長時間労働や、劣悪な環境、ハラスメントの問題もクローズアップされているし、映画業界が変化に対応しきれていない」と問題提起した。

そんな現状は、コロナ禍で拍車がかかっているとし「心の健康をどう守っていくかが大きな課題」と訴え、自身も立ち上げに関わった、一般社団法人日本芸能従事者協会が開設した相談窓口「芸能従事者こころの119」への理解を訴えた。今年6月にスタートしたが、11月にはいったん終了してしまうといい、「賞金は存続のために寄付したい」と明言した。

黒澤明賞は過去にはスティーブン・スピルバーグ、侯孝賢などが受賞しており、今年は選考委員を山田洋次、仲代達矢、原田美枝子、川本三郎、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターが務め、イニャリトゥ監督と深田監督を選出した。

第35回東京国際映画祭は、11月2日まで日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
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