2022.10.29 [イベントレポート]
男の人生の旅路を圧倒的な映像美で映し出した171分の映像叙事詩に「皆さんの判断にお任せする」
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エミール・バイガジン監督

第35回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出されたカザフスタン映画『ライフ』が10月29日、東京・丸の内TOEIで上映され、来日中のエミール・バイガジン監督が観客とのQ&Aに応じた。

本作は、『ハーモニー・レッスン』(2013)で鮮烈なデビューを飾ったカザフスタンの異才エミール・バイガジンの監督第5作。企業経営に失敗し、全てを失った男の彷徨を驚異的な映像とともに描いた叙事詩で、人生の意味を問いかける深遠な作品となっている。上映時間171分、驚異的な映像美と、予測不可能なところへと転がり続けるストーリー展開の映画を堪能した観客の前に経ったバイガジン監督は、「この場にいることができてうれしく思います。東京は2度目ですが、東京国際映画祭に招待していただいて感謝しております」と挨拶した。

これまで『ハーモニー・レッスン』が東京フィルメックスで、『ザ・リバー』が東京国際映画祭で上映されたバイガジン監督。田舎を舞台とした作品を多く撮ってきたが、今回は大都市の生活をベースに物語が展開される。この変化について「たくさんの方が、今回の作品は以前の作品とは違うと言ってもらいました」と切り出したバイガジン監督だが、「神が与えてくれた課題というものは大都会であれ、田舎町であれ、変わらないのではないかと思っています。映画づくりにおいて、表面的なことはそれほど重要ではないのではないかと思っています」と持論を展開する。

さらに「それからもうひとつ言いたいのは、実はこの映画の構想は最初の映画に取り組んでいる時からありました」と続ける。「つまり言いたいことは、いろいろな模様がこれまで発表してきた5つの映画にちりばめられているということです。もちろんそれを意識的に込めたということではないんですが、ただこの5つの映画が撮られた順番から考えてみると、そのようなことが言えるのではないかなと思いました」

過酷な運命に翻弄され、全編にわたって流浪の旅を続ける主人公だが、そんな彼に手を差しのべるのは、ほとんどが不法行為に手を染める者ばかり。「彼らは哲学的なことを言うが、実は悪党である。これには皮肉が込められているのか?」という観客からの指摘に、「おっしゃるとおりです」とうなずく。「人が話すことというのは氷山の一角だと思っています。例えばわたしは今、ステージの上で話していますが、しゃべりながらも、それとは矛盾した感情を感じていたりします。人は人生を美しい言葉で語りますが、でも人生は決して美しいものばかりではないと思っています」と付け加える。

ひとりの男の心の旅路、そして出会った人たちとの不可思議な出来事を、まるで万華鏡のように描き出した作品ということもあり、「スクリーンで起きていることが実際に起こったものなのか、空想のものなのか混乱した」という意見も。それには「2つの視点を指摘することで、具体的にお答えしたいと思います」と切り出したバイガジン監督。

まずはひとつ目のポイントとして、「(地獄に落ちる前に快楽を享受する)主人公が最後にたどり着いた人生ホテルですが、あれは実際に起こったことです」と説明する。さらにふたつ目として、「最後に主人公がどうなったのか。その描写をどうするか、主人公の最後をどう描くのか、ということについては製作チームでもいろいろと話し合ったことなのですが、最終的には皆さんの判断にお任せしたいと思います」と観客に呼びかけた。

第35回東京国際映画祭は、11月2日まで行われる。
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