2022.10.30 [イベントレポート]
「世界中の難民問題に目を向け、他の国についても同じことが言えるのだと伝えたくて、テーマにしようとしたのです」10/28(金) Q&A:アジアの未来『クローブとカーネーション』

クローブとカーネーション

©2022 TIFF

 
10/28(金) アジアの未来『クローブとカーネーション』上映後、ベキル・ビュルビュル監督(写真・左、監督/脚本/編集)、ハリル・カルダスさん(写真・右、プロデューサー)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
ベキル・ビュルビュル監督(以下、監督):こんにちは。世界の端の方からやってきて、映画を通じて皆さんと同じ時間を共有していることにとてもワクワクしています。
この映画は、約4年前に亡くした祖父に関することと、新聞を読んで得たことについて、妻と一緒に発展させて作りました。祖父はいつも自分の生まれ故郷で死にたいと言っていて、父もそう望んでいました。初監督作品であるドキュメンタリー映画でも老人や死に関することを扱いましたが、今作でも、私の祖父や父と同じ望みをもつ老人たちの不安や心配を当てはめながらストーリーを作りました。
 
ハリル・カルダスさん:この映画のプロデューサーをしているハリル・カルダスです。今日は皆さんこちらに来ていただいて、ワールドプレミアの私たちの映画を観てくださいまして誠にありがとうございました。
 
司会・石坂健治シニア・プログラマー:最初に質問いたします。この作品には、老人たちの言葉と地元の言葉という二つの異なる言葉が出てきましたが、これらの文化的背景や政治的背景について教えていただきたいです。
 
監督:私たちの国には多くの難民がいて、私が住んでいた地区にも難民がいます。難民たちの視点から物語を考えました。
彼らの中には、亡くなった親族を自分たちの地元の国に連れて帰ろうとしている旅の途中で捕まってしまったという人もいます。彼らに関する新聞記事を読んで、なぜ人々は自分の育った土地に行きたがるのだろうか、帰るための努力をし続けるだろうかと、その理由を考えました。考えた結果、私たちは元々の場所に属しているのではないかという結論に至って、その難民のことをベースとして描きました。
きっかけになったのはシリア難民ですが、私たちの国にシリア人に限らずたくさんの人が難民として逃れていますので、特にシリア人であることを明らかにして示そうとしたわけではありません。
今、私たちの国の中にはアフガニスタン、ロシア、ウクライナなどの方々がたくさんいますが、この瞬間の状況を反映して政治的な材料にしようとは思っていません。世界中の難民問題に目を向け、他の国についても同じことが言えるのだと伝えたくて、テーマにしようとしたのです。
 
Q:映画の後半で、警察に捕まっている女の子が貰ったミルクを飲まずに落としてしまったシーンが印象的でしたが、その意味を教えていただけますか。
 
監督:ミルクと子供は、どちらも純粋さの象徴です。それは世界中どこでも同じです。しかし、状況が緊迫していくにつれ、純粋さは残らなくなってしまいます。警察署のシーンもそうです。こういったシーンによって子供たちからも純粋さが失われてしまったことを示そうとしたのです。
 
Q:監督の考える未来や希望など、私たちへのメッセージとして、もしなにかこれだけは家に持って帰ってもらいたいことがあれば、教えていただきたいです。
 
監督:この作品では、内面に関して自分で問いただすことについて考えて作りました。
旅は、私たちの精神と一つになっているものです。私たちの人生は母体から生まれて子供になり、そして成長して老人になり、やがて亡くなっていくという意味では旅路でもあるのだと思います。その旅で自分の身体を自分自身で運ばなければならないという義務があるのです。したがって、自分の精神、生まれ育った後に死体になること、子供でもあるということ、そういったことを結びつけているロードムービーになります。
 
Q:どのようにキャスティングしたのでしょうか。また、現場でどういった演出を心掛けていたのかということをお聞かせください。
 
ハリル・カルダスさん:俳優のキャスティングについては、大変で随分いろいろなことをやってきました。
撮影前に行った地域では、移住してきたシリア人だけでなく多くの難民の方がいました。長い期間探し続けて、シャム・ゼイダンさんに出会いました。彼女は実際にその地域で生活し、小学校でトルコ語を学んでいるシリア人の少女でした。彼女の態度、最初はわからなかった彼女の俳優性から、たいへん影響を受けたため、彼女を主人公に選びました。
また、零下20度以下の環境で撮影することが可能なムサ役の俳優を見つけることも困難でした。ムサ役を演じたデミル・パルスジャンさんは70歳を超えていますが、彼と監督がお互いに気が合って、彼が相応しいという話になりました。パルスジャンさんの言葉や身振り手振り、ちょっとした表情などがとても素晴らしかったのです。それで、監督が、彼ならできると信じて採用しました。
 
司会・石坂健治シニア・プログラマー:本作はまだ出来上がったばかりですけど、彼らは完成した作品を観られましたか?
 
監督:まだ観ていないのです。トルコでもプレミア上映を行いますので、そのときに観てもらう予定です。

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