2022.10.28 [イベントレポート]
「美しいタイトルで、映画も美しく終わらせたいと思い、このタイトルにしました」10/26(水) Q&A:アジアの未来『蝶の命は一日限り』

蝶の命は一日限り

©2022 TIFF

 
10/26(水) アジアの未来『蝶の命は一日限り』上映後、モハッマドレザ・ワタンデューストさん (監督/プロデューサー/原作/編集/美術)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
モハッマドレザ・ワタンデュースト監督(以下、監督):(日本語で)コンバンハ。
皆さんにお会いできてとても嬉しく思います。そして、東京国際映画祭、いつか参加したいと思っていましたので、願いが叶いました。
 
Q:これは実話からできた映画だと最初に出てきますが、100%実話なのか、あるいは映画的に創作した部分はありますか?
 
監督:この物語は、事実に基づく話です。もちろん主人公がおばさんの夢の中にいる場面もあり、そこは私たちが作り上げました。私はいろいろなリサーチをした上で、この話を作りました。島は実在します。ただし、おばさんが洞窟のような場所を歩くシーンがありますが、それは映画のために創作しました。
この物語のきっかけになったニュースを新聞で読みました。そのニュースの見出しは、あるおばさんが小舟を使って息子に会いに行くというものでした。私は元々ドキュメンタリー監督なので、とても興味が沸き、いろいろと調べていくうちに、この物語を映画にした方がいいのではないかと思いました。
 
Q:撮影の手法について質問します。横にカメラがパンすると対象の人がフレームアウトして、その人が時間経過とともにフレームインしてくる。初めて観たので、びっくりしました。何かにインスパイアされたのでしょうか?それとも、監督がお考えになったのでしょうか?

 
監督:面白い質問をありがとうございます。私は過剰な撮り方をあまり好まないのですが、この映画の場合も2つのテクニックを考えて入れようと思いました。特別なテクニックを用いると、ストーリーと合わないといけないということもちろん考えました。私が考えたテクニックは、他の映画でもあまり観たことがありませんでしたが、よく考えたうえで実現させました。ロングテイクの中では、時間とともに流れていくところは、まるで夢の中からリアリティに近づいていくような感じにしたかったです。
1つ目のテクニックとしては、時間はカットすることなく変わっていくと考えました。木を触った手の動きを思い出していただきたいです。それは、夢から現実へと流れていくような話です。もう1つのテクニックとしては、皆さんもお気づきかと思いますが、主人公の女性以外は顔を見せていません。それは、主人公だけが大切であって、他の人たちは主人公のために存在するだけなので、特に表情を見せなくてもいいと考えたからです。
 
Q:タイトルの意味合いについて教えてください。
 
監督:この脚本を書いていたときには、最後の墓の場面で沢山の蝶々を飛ばそうと考えていましたが、後から考えて、それは不要だと判断しました。蝶々を入れる前にいろいろとリサーチしていたら、ある種類の蝶々は1日しか生きられないそうです。私が考えるに、私たちも蝶々と同じではないかと思うのです。生まれてきて、飛んで、飛んで、それで人生が終わってしまう、まるで一瞬のこと、1日のことです。ですから、脚本からは蝶々はなくなったのですが、タイトルにはそのまま残して、私たちの人生もある種類の蝶々みたいに1日だけなのかなと。先ほども申し上げましたが、脚本を書いているときに考えたタイトルを、最終的には蝶々のシーンがないにもかかわらず残してよいものかどうかと考えたのですが、美しいタイトルだなと思い、映画も美しく終わらせたいと思い、タイトルを残しました。
 
Q:主役の女優さんはどのような方で、どのようにキャスティングされたかのか教えてください。また、夢の中に出てくる手だけの演技のシーンは役者さんによるものでしょうか?
 
監督:主役ですが、イラン映画界でとても有名な女優Golab Adinehさんをキャスティングしたのですが、コロナがありまして、彼女が出演していた舞台とこのプロダクションが重なってしまい、彼女が出演できなくなってしまいました。もうすぐ撮影が始まるのに役者がいないとドタバタした状態だったところ、撮影監督がCMに出ていた年配の女性はどうかと提案してきました。その彼女が出演した映画を観て彼女に連絡したところスケジュールが空いていたのです。会ってみたら、彼女の声、歩き方が、自分がイメージしていた当初キャスティングしていた役者さんと同じだったので、その場で決めて契約しました。実は彼女は舞台女優でフランスのソルボンヌ大学を卒業しています。実際のロケでドキュメンタリーやおばあさんの映像を撮っていたので、それを彼女に見せて演じてもらいました。
手の部分は自分でやろうと思っていたのですが、監督しながら演技をするのは不可能でした。自分のチームにいるアートデザイナーがやりたいと言ってくれました。実際、彼がやってみると、彼の手はとても農民っぽく、よくよく考えてみたら自分の手はとても柔らかく芸術家の手なのでダメだったなと思いました。

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