2022.11.02 [インタビュー]
「この映画にあるような卒業式を送れなかった人たちに擬似体験をしてもらいたい」ーー第35回東京国際映画祭 アジアの未来部門出品作品『少女は卒業しない』中川 駿監督インタビュー

東京国際映画祭公式インタビュー:
少女は卒業しない
中川 駿(監督/脚本)
 
公式インタビュー

©2022 TIFF

 
短編映画『カランコエの花』(16)で国内映画祭13冠、異例のロングラン上映を果たし、一躍注目を浴びた中川駿監督。長編デビュー作となる本作は、直木賞作家・朝井リョウの連作短編小説を原作とした青春群像劇。河合優実、小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望というフレッシュな面々を主演に迎え、廃校が決まった地方の高校を舞台に、少女たちの卒業式までの2日間を描く。誰もが経験する“卒業”をテーマに、切なさが胸に迫る感動作を作り上げた中川監督に、脚色や演出について聞いた。
 
――本作の監督を務めることになった経緯は? やはり『カランコエの花』の成功を受けての抜擢だったのでしょうか?
 
中川駿監督(以下、中川監督):そうですね。プロデューサーの宇多川(寧)さんが『カランコエの花』を観て、すごく気に入ってくださったんです。で、『カランコエの花』の世界観と原作の「少女は卒業しない」の世界観に共通点を見い出して、中川に撮らせたら面白いんじゃないか、ということでお声掛けくださったのが始まりでした。
 
――朝井リョウさん原作で、高校を舞台にした群像劇というと、『桐島、部活やめるってよ』(12/吉田大八監督)という先例がありますが、参考にされた部分もありますか?
 
中川監督:もちろん、めちゃくちゃ観ました。原作の「少女は卒業しない」は短編集なわけですよ。7人の少女が主人公で、リレー形式で7つの物語が進んでいくので、どうやってもそのまま映画化するわけにはいかず、大きく構造を組み替える必要があったんですね。どのくらいまでいじっていいのか分からなかったので、映画の『桐島〜』をもちろん観ましたし、それを踏まえて小説のほうも読みました。
小説から映画化するにあたってだいぶ変えていたので、きっと朝井さんなら許してくれるだろうと思い、参考にしつつ僕も書いたという流れですね。
公式インタビュー
 
――7つの短編のうち4つを選んで映画化したとのことですが、その4つを選んだポイントは?
 
中川監督:僕が原作を読んで一番感じたのは、卒業という絶対的に避けられない別れを前に、それぞれの少女たちがそれにどう向き合って、受け入れて、結果、成長していくかを映した作品だな、ということでした。映画化するにあたっては、その“成長”という部分を際立たせた作品にしたかったんですね。
7つのうち3つは、あくまで僕の解釈ですけど、実は成長しているのがその少女ではなくて相手役の男の子だったり、少女自身の成長とはちょっとニュアンスが違ったので、勇気を出して外してみました。
 
――かなり大胆に脚色されていますが、脚色するうえで工夫したことは?
 
中川監督:構成を作り直すことがどうやっても難しかったので、オリジナルの要素を入れざるを得なかったんですけど、あんまり原作から離れた要素は足さないというか。例えば、映画では主人公のまなみ(河合優実)が卒業生代表の答辞を読むという設定になっているんですけど、答辞のシーンって原作にはないんですよね。ただ、在校生の送辞が使われているパートがあったので、原作の世界観から大きく逸脱はしないだろうなと。新しい要素を入れるにしても、なるべく原作の中にあるツールや要素を活用するということをすごく意識しました。
 
――『カランコエの花』も本作も巧みなストーリー構成に唸らされました。プロットはかなり綿密に練るほうですか?
 
中川監督:そうですね。まず起承転結レベルから始めて、もう少し細かく分割していって、分割していって…。わりと全体像から書き始めるので、書きながら考えていくタイプではないですね。最後のクライマックスのシーンも最初から決めていました。
 
――主演の4人は、本人と役のキャラクターが非常にマッチしている印象を受けました。キャスティングの段階から意識していたのですか?
 
中川監督:先に脚本があって、なんとなくイメージをチームで共有していたんですけど、ご提案いただいたキャストがそのままあのメンバーで、お会いしてみてイメージと齟齬がなかったのでそのまま出演してもらいました。
 
――4人とも自然な演技が印象的でした。撮影前にリハーサルの時間を長く取られたのですか?
 
中川監督:いや、全然。それぞれ個別に一回お会いしたのと、パートごとに本読みを一回しただけです。コロナ禍で、集まる機会を潤沢に設けられなかったので。
 
――それぞれの役に対する演出は?
 
中川監督:改めて考えると、そこまで演出した記憶がないんですよね。本当にイメージに合っている子たちだったので。あと、裏設定みたいなものをシートにまとめて、それを読んできてもらってから現場でパフォーマンスをしてもらったので、大外しすることもありませんでしたし。もともと、僕は自分が正しいと思っていないんですよ。(笑)女性たちの物語を撮る時はなおさら、男性である自分の感覚は間違っているという前提のもとにいる。だから、やりたいことは伝えますけど、それをどう表現に落とし込むかの正解は俳優部のほうにあると思っているので、現場で生まれるものとか俳優部の提案も瞬発的に取り入れるようにしています。正直、ポイントポイントで、僕が思ってたのと違うな、みたいなところはあったんですけど、それも面白いなと捉えて、よほどのことがない限り方向修正はしないでそのまま取り入れました。
 
――カメラマンは『カランコエの花』に引き続き伊藤弘典さんですね。撮影でこだわった点は?
 
中川監督:いつもそうなんですが、なるべく役者の邪魔をしないように撮ることを心掛けています。まずは役者に段取りを説明して、芝居を見て、そこから初めて撮影の伊藤さんとどう撮ろうかと話し合うんです。事前にある程度こんなイメージで、と伊藤さんと共有はするんですけど、それに役者の動きが縛られることのないように、イメージは持ちつつ現場で芝居を見て、それに合わせて修正していくスタンスでやりました。
 
――撮影時期は今年の3月末から4月初旬とのことですが、コロナ禍において、コロナ禍前と変わらない高校生の日常を撮ることに葛藤もあったのでは?
 
中川監督:やっぱりどうやってもフィクションになっちゃうじゃないですか。映画の設定は2021年なんですけど、実際の高校生はああいう高校生活を送れていない。実際にああいう卒業式を送りたかったけど送れなかった人たちがいっぱいいる中で、それを映画にするのはどうなんだろうと当初は悩んだりもしました。でも最終的には、ああいう高校生活を送れなかった人たちがいるからこそ、逆に別の世界線というか、こういう世界もあり得たというのを疑似体験してもらえるような作品にしようと思いました。
 
――2023年2月23日に劇場公開を控えていますが、本作をどんな人に届けたいですか?
 
中川監督:ターゲットを絞ってはいないんですけど、どちらかというと今の10代の子たちがリアリティーを持って観るというよりは、かつて卒業を経験した方、大人の方が自分の高校時代を思い出しながら観ると、すごく心に響く作品になっているんじゃないかなと思います。10代の子たちを映した作品ではありますけど、年代を問わず幅広い方に観ていただきたいですね。
 
 

インタビュー/構成:今井祥子(東京国際映画祭)

 
 
第35回東京国際映画祭 アジアの未来部門
少女は卒業しない
公式インタビュー

©朝井リョウ/集英社・2023映画「少女は卒業しない」製作委員会

監督:中川 駿
キャスト:河合優実、小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望

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