2022.11.01 [イベントレポート]
ジュリー・テイモア×行定勲、“映画と演劇を越境する”2人が創作について語り合う
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ジュリー・テイモア監督(右)と行定勲監督

第35回東京国際映画祭と国際交流基金の共催プログラムの一環として開催された「交流ラウンジ」に、本映画祭コンペティション部門審査委員長を務めるジュリー・テイモア(演劇・オペラ演出家、映画監督)、本映画祭 Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員長を務める行定勲(映画監督・演劇演出家)が参加。映画と演劇の垣根を越えて活躍するふたりが、それぞれの創作への思いを語った。

今年で3年目を迎え名称を改めた「交流ラウンジ」は、是枝裕和監督を中心とする検討会議メンバーの企画のもと、アジア、そして世界各国・地域から集う映画人と第一線で活躍する日本の映画人が東京で語り合う場となる。登壇した行定監督は、「まさかこんな大役を仰せつかるとは思いもよりませんでした。ジュリー・テイモアさんはご存じの通り、映画監督としてももちろん、演劇でも素晴らしいキャリアを残している方なので、演劇、映画をやっている身としては非常に緊張していましたが、楽しみにしてきました」と挨拶する。

プログラムが開始する直前には、テイモア監督がこれまで手がけた演劇作品を中心としたダイジェスト映像が流れたことに触れて、「わたしの人生において、日本がどれだけ大切か分かっていただけたと思います。実は21か22歳の時が初来日の時。その時はビジュアルシアターの研究をするという奨学金をもらって、日本や東欧、インドネシアなどをめぐったことがありました。その時に能や歌舞伎、文楽、そして黒澤明監督の作品が、映画にも演劇にも強い影響を与えてくれました」と日本への強い思いを語る。

今年5月に日本で公開されたテイモア監督の映画最新作『グロリアス 世界を動かした女たち』をモデルケースに、演劇と映画の違いについて語るふたり。テイモア監督の哲学を聞いた行定監督も「例えば演劇でやったものを映画にするということは、両者を区別しがちなんですよね。どうしても映画というのは時系列にとらわれてしまうもの。でもテイモアさんはそれらを軽々と越境されている。僕としては目からウロコというか。芸術というものを作られているんだなと感じました」と感嘆した様子だ。

そこからテイモア監督は、シェイクスピア劇を映画化した『タイタス』の例を挙げ、演劇の表現をいかにして映像で表現するかということを解説。「ドイツの監督であるムルナウや、フリッツ・ラングの時代(無声映画時代)、映画監督は重いカメラを持ってロケに行くことができなかったので。ある意味演劇と映画が合わさっていたと思う。そういう意味で、わたしがやるのはシネマティックシアターということなのです」と明言。さらに「やはりストーリーテリングというのはいろんな階層でやるべきだと思うんです。リアルな世界があり、内なる世界があり、そしてその人の夢があり、また抽象的な色やフレームで描くような抽象世界があり。いろんな階層で描くべきだと思うんです。われわれにとって映画は芸術の形を最大活用して、創造的に使って、ストーリーテリングをしていったらいいんじゃないかと思う」と付け加えた。

その言葉に深くうなずいた行定監督は「よく芸術とかエンタテインメントというのは、観る側の解釈に委ねるという言葉があるけど、僕はそうじゃなくて、解釈を手放してもらっても、美しいとか楽しいとか、面白いとか、そういうものの集合体であるべきだと思っているんです。でもそういうことをすると観客や批評の分野でも分かりにくいとか、理解しづらいという意見が出てきて。そことどう切り結ぶか。でもジュリーさんは非常に勇敢に、自分のやりたい表現というものを突きつけて、それがちゃんと理解に届いているというのがすごいなと思います」と語る。

テイモア監督も「わたしは観客のためにという理由で、そこまで下がらなくてもいいと思っています。だって観客は理解できるから。なんならお金を持って来る人や、プロデューサーよりも観客の方が理解してくれる。いいストーリーがあって、いい演技があって、いい映像などがあれば観客は理解してくれる。だから新鮮で新しいものを出した方がいい。わたしの『グロリアス 世界を動かした女たち』だって、子役の6歳の子であってもそのストーリーは理解できるわけです。観客の理解度をバカにしてはいけない」と力説。

さらに、テイモア監督が演出を務めた舞台版「ライオン・キング」についても、「あの舞台も、エンタメ業界の歴史の中でもっとも成功した演劇のひとつです。ストーリーはシンプルですが、それを芸術的に語っている作品。ディズニーの偉い人がストーリーを追えるかなと心配していたんですが、わたしは『分かります、大丈夫です。動物が人格化しているのだってちゃんと分かります』と返したんです。特に日本では洗練されたアート映画が生まれている土壌があるので、その辺はしっかりと伝わると思います」と訴えた。

そんなテイモア監督の話を聞き、「今日の話はふに落ちることだらけで、勉強になりました」と語る行定監督は、「ジュリー・テイモアさんは日本の能や歌舞伎の手法に影響を受けたわけですが、日本の観客はジュリー・テイモアさんの作品からそのエッセンスを吸収して、本当の根源たる日本の芸術に目を向けるきっかけを作るような、そんなトーク内容だったなと思います」。一方のテイモア監督も「時として文化というのは、外にいる人間の方が中にいる人間よりも感銘を受けることが多いものですから。特に日本の伝統文化というのは、世界を見ても最良のもののひとつだと思うし、外の人間がこれだけインスピレーションを受けているんですから。なくしてほしくないなと思っています」と締めくくった。
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