2022.11.01 [イベントレポート]
「黒澤の映画に出合わなければ映画監督になっていなかった」ジュリー・テイモアが語る黒澤映画の魅力&無声鑑賞の勧め
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ジュリー・テイモア監督

第35回東京国際映画祭「黒澤明の愛した映画」部門で、『隠し砦の三悪人』4Kデジタル修復版が11月1日、TOHOシネマズシャンテで上映され、映画祭審査委員長として来日中のジュリー・テイモア監督がトークを行った。

「15歳の時、『羅生門』を初めて見ました。パリでパントマイムを学んでいた時です。字幕がなかったのですが、ストーリーがわかりました。最高の物語のひとつだと思います。誰の真実が本当の真実なのか……、今の時代にも通じます。後は黒澤監督のビジュアルの魅力にひかれました。無声の映像を通して、いかにイメージが力を持つかがわかります。動きカメラやレンズの使い方は黒澤は世界最高の巨匠です。あの域に達している監督は誰もいないと思うのです。そして、三船敏郎さんも最高ですね」と熱い思いを語った。

舞台演出家としても世界的に活躍し、「夏の夜の夢」「テンペスト」などシェイクスピアの戯曲を映像化しているテイモア監督は、同じくシェイクスピアを基にした黒澤監督の『蜘蛛巣城』『乱』などを挙げ、「彼のシェイクスピアはシェークスピアを超えている。翻訳でもない違う言語で日本に合わせ、題材をしっかりとらえて脚色しています。シェイクスピアは最も優れた脚本家であり、シェイクスピアの作品に基づいた映画は900本以上ある。シェイクスピアの描くその人間性を黒澤監督は捉えていたと思います」と評した。

この日上映された『隠し砦の三悪人』は、戦国時代を舞台に、敗軍の侍大将が姫君と軍資金を守りながらふたりの百姓を従えて敵中を突破するアクション活劇。興行的に大成功するとともに、ベルリン国際映画祭で監督賞を受賞した。

「昨日の夜と今朝、再び見直しました。最初は音あり、つぎは音なしで。これは映画を作りたい人には最高の教材になります。フレームの使い方や構成は、まさに絵画を描くよう。黒澤は素晴らしい画家で、振付師である。能の音楽をサムライの登場シーンに使ったりと。こういった演出は最近の映画には見られません。娯楽や商業主義に走りすぎだと思うのです」と感想を述べ、「音無しでみると、以下に彼が天才的なストーリーテラーであるかわかると思います」と三船敏郎が馬に乗るアクションシーンなどを例に挙げて解説した。

「彼は、カメラワークで観客の感情を操作しています。最初はわからなかったのですが、2度3度見て天才だと気づきました。興奮と緊張が高まるカメラワークでチェイスを演出しています」「そして、ワイドショット(ロングショット)の多用です。最近の監督は予算的や配信の為クローズアップか手持ちが主になっています。ワイドショットで撮ると、背景のすべてを埋めなければいけず、非常に複雑なショットになります。これは最近の映画では見られません。また、ロングレンズとショートレンズを使い分けて、ダイナミックな構図を撮っています」とその特徴を挙げる。

そして最後に「黒澤の映画に出合わなければ、私は映画監督になっていなかったと思います」と感慨深げな面持ちでトークを終えた。
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