2022.10.26 [更新/お知らせ]
「この作品からどのような意味を見出したのかを観客の皆さまに伺いたいです」10/25(火) Q&A:コンペティション『ライフ』

ライフ

©2022 TIFF

 
10/25(火) コンペティション部門『ライフ』上映後、エミール・バイガジン監督をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
司会:本作の監督、プロデューサー、脚本、原案、撮影、編集を担当されましたエミール・バイガジン監督からひと言ご挨拶を頂戴したいと思います。
 
エミール・バイガジン監督(以下、監督):2回目の来日となります。東京に再び来ることができ、とても嬉しく思います。初めて東京に来たのは2018年のこと(第31回(2018)TIFFコンペ部門『ザ・リバー』)ですが、そのときのことを今でもよく覚えております。そして、私の初来日のときに作品を観てくださった方のここにいらっしゃるのではないかと思うと、とても嬉しく思います。
 
Q:現代カザフ映画はほとんど知らなかったので興味深く鑑賞いたしました。ジム・ジャームッシュ監督の『デッドマン』(95)からインスピレーションは受けましたか?
 
監督:ジャームッシュ監督に関してですが、私の年代では、他の監督と同様にジャームッシュ監督から何らかの影響を受けております。ですから、「連想」、「アソシエーション」という意味では何かしら得られたかもしれないですけど、私の作品とジャームッシュ監督の作品との共通点は、「さまよう人、彷徨する人」で、それ以上の関連性はないと思います。
 
Q:前作の『ザ・リバー』も素敵な作品でした。本作の壮大な物語の着想はどこから得られたのか、作品の制作はどこから始めるのかを聞かせてください。
 
監督:どこから着想を得たのかということですが、着想そのものはおそらく10年ほど前にある一人の人間との出会いでした。その人は借金まみれで、また死と隣り合わせの状態でした。もうひとつは、哲学的な側面もありましたが、その哲学に関して、哲学者の名前については具体的に回答を控えさせていただきたいと思いますが、その意味についてお話ししたいと思います。それは、人生に対する愛、愛の中の人生、そうしたものです。こういう話をすると、観客の皆さまの中には、あの哲学者のことだと思い当たる方がいらっしゃるかもしれません。私にとってはその哲学者、人生に対する愛ということを強調していた哲学者の考えが作品の出発点となりました。すなわち、人生には様々な困難、苦労があろうとも、人生を愛する、楽観的であろうとする、そうした姿勢です。様々な障害があってもそれを乗り越えようとする姿勢です。本作で、主人公は放浪の旅の中で様々な人々と出会います。そして、それぞれの登場人物がなにがしかの人生の意味を投げかけます。私にとってそれは人生の意味の万華鏡、そのような意味だと思っています。また、デジタル化、情報化というものが非常に発展した今日において、私たちの存在そのものが万華鏡のようなものだとも思えるのです。
 
Q:この作品は前半と後半で生と死についてイメージしているのでは思ったのですが。
 
監督:私自身が思うに、演劇的な解釈、技法、手技について言うと、作品全体において死の意味はつきまとっていると思います。主人公は一度ならず何度も死の危険に晒されながらも何とか生きながらえています。実は、私たち製作スタッフの中にも本作の最後の場面に関する解釈には色々な意見が出て、議論になったほどです。人それぞれの解釈がありました。製作チームは、もちろん最後の場面がどのようなものかを知っているのですが、それが何を意味するのか、それについてはそれぞれ考え方、解釈がありました。
ですから、むしろ私から皆さまに問いかけたいのは、最後の場面をご覧になって皆さまご自身がどのように理解されたのか、どのような意味を見出されたのかということをぜひとも皆さまからお聞きしたいと思っております。
私自身、自分が撮った作品に対してこと細かに説明したり、自分の言葉で話したりということがあまり好きではないのです。むしろ、私は皆さまがどのようにそれを受けとめられたのか、どのような意味を見出したのかということを観客の皆さまから伺いたいです。そうしたことに大きな喜びを見出すタイプの人間です。特に本作に関しては、最後の場面で皆さまがどのように思われたのか、といった話を聞ければいいなと思っております。
 
Q:音響についても監督が担当されたのでしょうか?
 
監督:サウンドについて質問してくださりありがとうございます。このような質問をいただき非常に嬉しく思います。サウンドディレクターは別の者が担当しまして、7~8ヶ月くらい一緒に仕事をしました。
音楽あるいはサウンドを作っていくうえで難しかったのは、主人公がいろいろな世界を旅するので、その世界を表現するような音や音楽が必要でありながら、ステレオ的で重層的な音を作っていく必要もありました。しかし、その一方で、これは一つの作品ですのでその一体性を持たせる必要もありました。それぞれの世界を象徴するような音を作りだすのに苦労しました。
10月29日に2回目の上映がありますが、ここよりももう少し大きい会場になると聞いています。私自身も会場で皆さんと一緒に鑑賞させていただくのですが、その時、音響がどういったものなのか、皆さまと一緒に東京で満喫したいと思っております。

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