2022.10.27 [イベントレポート]
濱口竜介監督、エドワード・ヤン監督は「最も敬愛する映画作家」全作上映を期待
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濱口竜介監督

台湾の故エドワード・ヤン監督の1994年『エドワード・ヤンの恋愛時代』のレストア版が10月27日、第35回東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門で上映され、濱口竜介監督がトークショーに出席した。

同作は、ヤン監督の名を世界に知らしめた91年『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』に続く作品。濱口監督は2000年代初頭に初めて見たそうで、「悲劇的な大傑作だった『牯嶺街少年殺人事件』の後に、絶望から楽天的なものを捉えようという試みがここから始まったのではないかと思う」と推察した。

劇的に変わっていく台北の街で、空虚な思いを抱えて暮らす若者たちの群像劇。「時系列で見ると大きな跳躍をしていて、台北にこだわって撮り続けた中で自分自身も変わっていった。だから軽佻浮薄(けいちょうふはく)な恋愛コメディに見える映画を作ったのかな」と分析した。

内容に関しても、『牯嶺街少年殺人事件』と比較。「登場人物の顔がはっきりしているが、それが見ていたい顔かというとそうでもない。後半にいくにつれ、顔が見えなくなって闇に引き込まれ都市の光の当たらない場所でコミュニケーションを取るようになる。そして最終的には人間性の回復を求めたところが大きな進行の違い」と解説した。

その上で「最も敬愛する映画作家の1人。今回見られるものは見直してみたが、1作1作、大胆に自分自身を更新している作家」と強調。『エドワード・ヤンの恋愛時代』についても「大傑作で歴史に残る、私もフェイバリットな1本」と称賛した。

59歳で早逝したヤン監督の作品は権利関係が複雑なものがあり、台湾以外での上映が難しい作品も多い。『エドワード・ヤンの恋愛時代』も長く権利が不明なままだったが、今年のベネチア国際映画祭にレストア版が出品されたことで、日本での上映が実現した。濱口監督は、「いつか全作品が上映されることを待ち望んでいます」と期待していた。

第35回東京国際映画祭は、11月2日まで開催される。
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