10/28(金) コンペティション『輝かしき灰』上映後、ブイ・タック・チュエン監督(写真・右、監督)、ジュリエット・バオ・ゴック・ドリンさん(写真・中央、俳優)、レ・コン・ホアンさん(写真・左、俳優)をお迎えし、Q&Aが行われました。
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ブイ・タック・チュエン監督(以下、監督):この作品を観に来てくださった皆さま、どうもありがとうございます。こんにちは。この作品があまりにも悲しくて、沈んで、暗くて、重すぎなかったことを期待しております。しかしこれ以上、軽くすることは出来ませんでした。
ジュリエット・バオ・ゴック・ドリンさん:(日本語で)アリガトウゴザイマス。
この場にいられることを大変誇りに思っております。非常に残念なのは、本当に素晴らしいキャスト、スタッフが一緒にこの場にいられなかったことだと思います。ですけども、今日は監督、一緒に出演してくださった俳優がいますので、二人で皆さんにご挨拶出来ることを嬉しく思っておりますし、私にとって初めての主演作品だったんですけども、本当に素晴らしい経験をさせていただきました。
レ・コン・ホアンさん:本日『輝かしき灰』を観に来てくださった親愛なる観客の皆さま、こんにちは。今日はこの作品を観て皆さまが感じたこと、質問などを色々お受けしたいと思っておりますので、ぜひこの後、ご質問をしてください。よろしくお願いします。
Q:TIFFでコンペティションにベトナムからの映画が選ばれるのは初めてと聞きましたので、おめでとうございます。質問は、この映画の中で一番印象に残っているとか、一番気に入っているシーンがあったら、その理由と併せてお聞きしたいです。
監督:私から先に答えさせていただきます。この作品を作るときに一番私が大変だなと思っていたのはまず、ある女の子、若い女性が、夫の視線を求めていた、夫に見てもらうことをずっと求めていたわけですけれども、それが叶うことが絶対になかったわけですね。そして最後まで彼女はずっと夫に見つめられるということをずっと望んでいました。それが一番この映画の中で大切だと思っていたことであって、それらのシーンはこの映画の中で一番大切だという風に思って俳優たちに演じてもらったんですけれども、今作では俳優たちが大変良い演技をしてくれて、成功したと思います。そのような理由だからこそ、この映画は少しテンポが遅いと言いますか、静的なものになってしまったので、観客の皆さんが集中力がちょっと欠けてしまうと眠くなってしまう、そういう作品になったかもしれません。
ジュリエット・バオ・ゴック・ドリンさん:監督のおっしゃっていたこと、私もその通りだと思います。私の演じるホウという女性なんですけれども、監督のおっしゃるように本当にご主人に、旦那さんに自分を見てもらいたい、ただ残念ながらそれが叶わなかった、というところなんですね。私にとって一番印象的な場面はどこですか、ということなんですが、これは予告編にもあったんですけれども、彼女がご主人にある手紙を読み上げているシーンというのがあります。話している内容というのは、もう一人の女性、彼女のご主人っていうのは、そちらの女性の方がもちろん好きなわけですよね、そっちの方を向いてしまっているということもあって、そういう意味では彼女に対する憎しみもあるんだけれども、逆にその彼女が自分のご主人に対してなかなか叶わないところで、非常に大変な思いをしているところで、彼女の愛情が伝わらないという部分においての気持ちもよくわかるという、そういう複雑なものがあると思うんですけれども、要するに友人のような、なんだけどもやはりちょっと許せないような、そういう複雑な感情を演じているという、そこの部分が私は好きです。
レ・コン・ホアンさん:映画の中で私が一番印象的だったシーンというのは、私が演じたズオンの子どもが生まれる直前のシーンですね。妻のお腹が大きくなっていて、その妻を助けるためにズオンのお母さん、姑さんも同じ船に乗っている。ズオンにとって大切な人たちが1つの船に乗っていて、子どもの誕生を待っている、ズオンだけがその船の中にいないという、このシーンが一番印象的でした。
Q:原作があるのかと思うんですけれども、これを映画化しようと思われたきっかけというか、どういうことで映画化されようとしたのかということをちょっと伺いたいです。
監督:私が映画化したのは、ベトナムのグエン・ゴック・トゥという女流作家の短編小説2本です。この小説の中では、まず1つの物語の中では、2人の若い女性がそれぞれ夫を持っているんですけれども、1人はあまりにも寂しく思っている。そしてもう1人はずっと海に行っている、という2人の夫を持つ2人の女性が出て来ます。このストーリーの中では女性はいつも強くて、彼女たちの人生を助けるための男性というのはいらないんですけれども、しかしながら彼女たちはいつも男性に苦労しています。そして彼女たちは自分たちが苦しんでいるということを全く理解していなくて、ただただ男たちを愛しているということだけが彼女たちにはわかっているんですね。彼女たちのその我慢強さですとか忍耐強さ、寛容さ、愛の対象に対する寛容さというものが強く感じられました。そしてもう1つの短編、2本の短編から映画化しているんですけれども、今申し上げたのが1本のお話で、もう1つ発展させまして、もう1本の短編の方からは、女の人が主人公で、昔の恨みというものを克服してまた新しい愛情を獲得しようとしているそういう女の人を選びました。そのように、大変素晴らしい短編小説の中から3つのストーリーを選んで映画化したわけですけれども、まず初めに私が感じたことは、女性に対する感嘆でした。つまり、女の人は強い、とても強い、男よりも強い、という女の人に対する感嘆の気持ちからこの作品が生まれました。