2022.11.02 [イベントレポート]
第35回東京国際映画祭、心理スリラー『ザ・ビースト』がグランプリ・最優秀監督賞・男優賞の3冠
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第35回東京国際映画祭が閉幕

第35回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月2日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで行われ、各賞が発表された。最高賞にあたる東京グランプリ/東京都知事賞は、スペイン・フランスの合作映画『ザ・ビースト』が受賞。同作は最優秀監督賞(ロドリゴ・ソロゴイェン監督)、最優秀男優賞(ドゥニ・メノーシェ)も獲得し、3冠に輝いた。

今年のコンペ部門には、107の国と地域から1695本の応募があり、15作品が正式出品。『ザ・ビースト』の中心となるのは、スペイン・ガリシア地方に移住して農耕生活を始めたフランス人の中年夫婦。ふたりは村に人々を呼び戻すために、荒廃した空き家の修復を始めるが、村の有力者から嫌がらせを受ける。閉鎖社会で起こるよそ者に対する反発とその顛末を描いた心理スリラーだ。

審査委員長を務めたジュリー・テイモア監督は、「心理スリラーであり、深く感動的なラブストーリーであると同時に、階級の格差や外国人排斥、都市と農村の間の隔たりについて、重層的に解説する並外れた映画。この映画はまさに傑作です」と賛辞をおくる。「脚本は実際の出来事に基づいた、複雑で魅力的な物語であるだけでなく、演技、演出、音楽、撮影、あらゆるレベルで優れています。緊張が高まり、避けられない暴力が噴出しようとしているのを感じます。対話と時間に富んだシーンの助けを借りて、双方の対立に共感することができます。監督は重荷を背負った獣が、男同士の戦いに挑むという、非常に刺激的で感情的な作品に仕上げてくれました」と語った。

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東京グランプリ/東京都知事賞は『ザ・ビースト』

ソロゴイェン監督は、この日は登壇が叶わなかったが、映画祭に寄せたビデオメッセージのなかで、「最優秀監督賞と、東京グランプリ/東京都知事賞の2つをいただけるなんて、本当に嬉しいです。この2つの賞を受賞できることを心より光栄に思います」と、喜びを明かした。

観客賞に輝いたのは、稲垣吾郎が主演した今泉力哉監督作『窓辺にて』。今泉監督作品のコンペ部門への出品は、『愛がなんだ』(2019)に続く2度目。観客賞を初受賞した今泉監督は、「私はこの東京国際映画祭には、コンペ部門には2度、日本映画スプラッシュ部門には何度か参加させて頂いております」と紹介した上で、映画製作にこめる思いを語り始める。

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『窓辺にて』の今泉力哉監督

「私の作品はすごく個人的な悩みというか、本当に小さな悩みを描いていて、特に恋愛映画をずっと作り続けています。世界には戦争やジェンダーなど、さまざまな問題があるなかで、本当に小さな、映画の題材にならないような、とるにたらない悩みや個人的な問題を、恋愛を通じて、笑いも含めて描こうと思い、いままで(映画を)作り続けています。映画に限らずですが、小説などそういうものは、どうしても、大きな問題を取り上げて語るという側面があると思います。自分の作品は主人公も受動的だったり、自ら行動できなかったりするんですが、見過ごされるような小さな問題について描きたいと思っています」

「今回の映画は、主演の稲垣吾郎さんと一緒に作らせて頂きました。稲垣さんは先日コロナに感染して、映画の公開初日にも、大事をとって登壇できないという状況があります。まだまだ戦争だけじゃなくて、コロナもそうですし、世界にはいろんな問題がありますが、全てネガティブにとらえるわけではなく、そこにある小さな喜びについて、自分なりにできることをして、考えていければと思います」

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審査委員長のジュリー・テイモア

最後にテイモア監督は、「第35回東京国際映画祭の審査委員長としまして、世界中から集まった幅広い映画作品について、議論する機会を与えて頂きましたこと、大変光栄に思っております。私たち審査員は、北マケドニアからベトナム、スリランカ、スペイン、イタリア、チリ、カザフスタン、レバノン、イスラエル、イラン、そして日本のストーリーのなかで、旅をしました」と、喜びとともに審査を振り返る。そして、次のように映画の総評を述べた。

「私たちの住む世界とは大変異なる文化の持つ暗い面、また明るい面、こういう側面を見ることがまさに、このような映画祭の素晴らしい真意であると感じます。情熱をこめてストーリーを語る新しいフィルムメーカーの声を聞くことができ、そして世界の人々に注目して頂くことは、本当に素晴らしいことだと思います。そしてまた、経験豊かなフィルムメーカーたちが、この非常に困難なコロナのなかで、そして資金集めが容易でない状況のなかで、想像力を駆使して作品を製作されていること、素晴らしいと感じました。(日本語で)ありがとうございました」

なお、第35回東京国際映画祭のデータも発表(速報値/2日は見込み動員数)。上映動員数/上映作品数は「5万9541人/169本(10日間)」(第34回:2万9414人/126本:10日間)、上映作品における女性監督の比率(男女共同監督作品を含む)は「14.8%(169本中25本)」、そのほかリアルイベント動員数は「5万0842人」、共催/提携企画動員数は「約2万人」となった。

 全受賞結果は以下の通り。

コンペティション部門
▼東京グランプリ/東京都知事賞:『ザ・ビースト』(ロドリゴ・ソロゴイェン監督)
▼審査員特別賞:『第三次世界大戦』(ホウマン・セイエディ監督)
▼最優秀監督賞:ロドリゴ・ソロゴイェン監督『ザ・ビースト』
▼最優秀女優賞:アリン・クーペンヘイム『1976
▼最優秀男優賞:ドゥニ・メノーシェ『ザ・ビースト』
▼最優秀芸術貢献賞:『孔雀の嘆き』(サンジーワ・プシュパクマーラ監督)
▼観客賞:『窓辺にて』(今泉力哉監督)

アジアの未来部門作品賞
蝶の命は一日限り』(モハッマドレザ・ワタンデュースト監督)

Amazon Prime Video テイクワン賞
該当作品なし
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