2022.11.02 [インタビュー]
第35回東京国際映画祭 コンペティション部門審査委員 シム・ウンギョンさん特別インタビュー

シム・ウンギョンさん
 
本日11月2日、クロージングを迎える東京国際映画祭。本映画祭でジュリー・テイモア審査委員長のもと、コンペティション部門の審査委員を務めた女優シム・ウンギョンさんが、なんとサプライズで取材に応じてくれました。受賞結果は17時より始まるセレモニーで発表され、その後、開かれる審査委員記者会見で5名の審査委員全員の講評が明かされますが、ここではシムさんがどんな思いで審査に臨んだのかや、好きな監督とか作品についてお話をうかがいました。飾らない率直な言葉が詰まったインタビュー──是非ご一読ください。
 
──最初に、東京国際映画祭の審査委員の話が来たときはどう思われましたか?
 
シム・ウンギョンさん(以下、ウンギョンさん):撮影でソウルに滞在中、街中をブラブラ散歩しているときに連絡をいただいいて、それはもうびっくりました。というのも、映画祭の審査委員を務めるには、自分は技術的な知識が少し足りないと思っていたからです。でも知識のあるなしは関係なく、コロナ禍のいまの時代だからこそ映画を大切にしたいと思い、ぜひやらせてくださいとお願いしました。映画は人と人をつなげる人間的な芸術です。その力を再確認したいと思いました。
映画祭で審査をするのはただ漠然と感想を話すのとは違って、「ここはこうだ、あそこはああだ」と、作品について詳しくディスカッションできなければなりません。自分は韓国語が母国語で、日本語もいまはこうしてふつうに話せますが、ほかの審査委員の方々の意見を聞いて、ぱっと一瞬で意見を返せるのかという部分では、少し不安もありました。でも英語、日本語、韓国語を並行して話し、安心して審査に臨むことができました。
 
──映画祭の審査委員を務めたのは今回がはじめてですか?
 
ウンギョンさん:7~8年くらい前、子役の頃、お世話になった監督に誘われて、韓国のミジャンセン短編映画祭(2002-2021終了)で審査委員を務めたことがあります。今回はそれ以来です。(笑)
 
──シムさんは韓国人で、残りの審査委員はアメリカ、ポルトガル、フランス、日本とみな国籍は異なりましたが、審査自体は楽しめましたか?
 
ウンギョンさん:映画について、これだけ国籍も年齢も異なる方々と真剣にディスカッションするのは初めてのことで、大変でしたが楽しかったです。皆さんの意見を聞いて、瞬間的に言葉を投げて、それをまた返してもらったりの連続で、「あ、これが本当の、人と人とのコミュニケーションだ」と実感しました。
 
──どんなところに基準をおいて、コンペ作品をご覧になりましたか?
 
ウンギョンさん:ほかの審査委員の方々は、演出や映画の技術的な部分を細かく議論されていましたが、私は子役時代から20年ほど演技のお仕事を続けてきたので、これまで撮影現場で培った職業上の経験を拠り所にして、映画を判断することにしました。いちばん大事にしたかったのは、今の自分の心に伝わるものでした。この映画は私に何を求め、何のメッセージを届けたいのか。そのことを知りたくて映画を見ていました。
今回は女性を描いた作品も沢山あって、ひとりの役者としてとてもうれしく、どういう風に演じているのか刺激を受けました。特に、女性の主体性──キャラクターが自らの力でどう道を切り拓いているのかを気にかけながら作品を見ていました。
 
──実際にメッセージが感じられる作品はありましたか?
 
ウンギョンさん:もちろんです。個人的に鳥肌の立つ作品もあれば、審査委員全員で「素晴らしい。これこそシネマだ」と推したくなる作品もありました。どの映画もそれぞれに価値があり、メッセージ性もあったと思います。個人的に好きだった作品については、クロージングセレモニーのあとの審査委員記者会見の席でお話したいと思います。
 
──短期間に映画を一辺に15本見るというのも、人生でなかなかない経験だと思います。審査委員の務めを果たして、あらためて映画に対する思いは深まりましたか?
 
ウンギョンさん:今回、審査委員を務めて、開幕から昨日まで映画と向き合い、「私、こんなに一生懸命映画を見たことがあったのかな?」と思うくらい、真剣に取り組みました。審査作品は15本ですが、倍の30本以上見たのと同じエネルギーを使った気がします。(笑)
私はいま28歳ですが、韓国式の数え年で言うと来年は30歳になるんです。だから今年は自分にとって節目の年であり、審査委員の大役を無事に果たすことができて、一生忘れない特別な年になりました。
 
──2019年に日本で映画に出演されるようになり、これまで5本日本映画に出演されています。あらためて日本の映画界に思うことはありますか?
 
ウンギョンさん:日本の映画界では、以前は年間700本以上も作品を作っていたと聞いたことがありますが、インディーズからメジャー映画までジャンルを限らず作りだしている点に、たいへん感銘を受けています。沢山の役者がチャンスに恵まれる、いい機会があるという点で。作品ごとにメッセージが多用であるのも非常にいいことだと思います。
 
──今後は組んでみたい監督はいらっしゃいますか?
 
ウンギョンさん:沢山いらっしゃるので難しいですが、是枝裕和監督と岩井俊二監督は、私が初めて日本映画で好きになった監督ですし、機会を頂いたらいつかご一緒したいと強く願っています。韓国映画ではパク・チャヌク監督、ポン・ジュノ監督の大ファンです。今回の日本のコンペ作品も大変興味深く拝見しており、出演するならどんな役になるんだろうと想像しました。
 
──いままでやったなかでもっともやり甲斐を感じた役は?
 
ウンギョンさん:全ての作品が大事で作品によってそれぞれ感じ方は違うのですが、自分の中で役者としての転換期を作ってくれた『サニー永遠の仲間たち』(11)です。いまの自分の土台にもなっていますので。自分の出演作ということを離れても、音楽もいいし単純に面白い。エンターテインメントとしてよくできた作品だと思っています。
日本で出演した作品はすべてが記憶に残っています。なぜなら韓国と違う環境で演じ、セリフは日本語。こんな機会は、役者としてもう一生ないかもしれないと思って毎回演じてきましたから。外国語で演じる経験をこうして何回もやらせていただいている自分は、他の役者さんより準備時間が倍以上かかることなど大変なことも沢山ありますが、非常に幸運であり、恵まれているんだと思います。日本で映画に出演するようになって、私はあらためて役作りを大切にするようになり、演じる前の準備の仕方も変わったように思います。本当にありがたいことです。
 
──来年は是非、作品で東京国際映画祭に戻ってきていただけたらと思います。本日はありがとうございました。
 

2022年11月1日
東京ミッドタウン日比谷 東京国際映画祭特設事務局
取材 菊地裕介・赤塚成人
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