2022.10.31 [イベントレポート]
国境に分断された女性たちの悲劇描く『テルアビブ・ベイルート』監督、「平和が訪れる日を望んでいる」
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ミハル・ボガニム監督

第35回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたキプロス、フランス、ドイツ合作映画『テルアビブ・ベイルート』が10月31日、東京・丸の内TOEI1で上映され、イスラエル出身のミハル・ボガニム監督が観客とのティーチインに応じた。

1980年代のイスラエル、レバノン間の紛争を背景に、国境によって家族と分断されたふたりの女性の旅を描いたロードムービー。

ボガニム監督は「日本の方に身近ではないテーマかもしれませんが、関心を持ってくださってありがとうございます」と挨拶。「戦争では、より多くの犠牲を払っているのは女性だということを強調したかった」と主題について語る。ふたりの女性がお互いにフランス語で会話することについて「レバノンにいる女性はレバノン人です。レバノンはフランス語を話す人が多いのです。もうひとりはイスラエルに移住したフランス人という設定です」と説明した。

本作では世界的に著名なイスラエル出身のジャズベーシスト、アビシャイ・コーエンが音楽で参加、俳優として出演もしている。「私は彼のファンで人柄も好きです。私は音楽を聴きながら脚本を書くのですが、彼の曲を聞いていたので、映画で使えないか相談し、既にある楽曲と描き下ろしを用意してもらいました。そして、映画に端役で出たいというオファーがあったので、出ていただきました」とその経緯を明らかにした。

現実問題として、イスラエル人はレバノンに入国できず、逆も然りという状況が本作の悲しいラストを表現している。撮影は「ほぼキプロスです。中立の立場の国で撮影した」といい、限られた予算の中「大がかりな戦争のシーンと、少人数のシーンを取り混ぜて撮ったことに苦労した」と明かす。そして、最後に「特定の地域の作品ですが、日本まで届き理解してもらえることがうれしい。中東の対立には複雑な要因がありますが、いつか平和が訪れる日を望んでいます」と会場に語りかけた。

第35回東京国際映画祭は、10月24日~11月2日、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
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