2022.10.31 [イベントレポート]
スポンサー倒産危機から始まった「メガゾーン23」 板野一郎、庵野秀明ら若手に「やりたいようにやらせてあげたい」
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登壇した三浦亨氏、柿沼秀樹氏(左から)

第35回東京国際映画祭のジャパニーズ・アニメーション部門で10月30日、特集「アニメと東京」の1作として「メガゾーン23」が東京・TOHOシネマズシャンテで上映され、同作でメカニックデザイン(共同)を手がけた柿沼秀樹氏、プロデューサーを担当した三浦亨氏が、アニメ評論家の藤津亮太氏とともにトークに臨んだ。

同作は、1985年に発売されたOVA(オリジナルビデオアニメ)。大都会をバイクで目的もなくぶっ飛ばす若者と、それぞれの目的に向かってひたむきに生きる3人の少女との出会い、彼らの青春がSFタッチで描かれた。「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の石黒昇が監督、キャラクターデザインを平野俊弘と美樹本晴彦が担当した。

企画の発端は、柿沼氏が当時所属していたアートミックがスポンサーである玩具メーカーのタカトクトイスに企画書とイメージボードを預けたところから始まる。その後、近しいところから同社の経営が危ないから企画書を引き戻したほうがいいという助言を受け、その通りにした直後に同社は倒産。波乱万丈な船出となったが、その後、ビクター音楽産業(現・JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント/アニメ部門は子会社のフライングドッグが継承)とアニメグッズを扱う「あいどる」がスポンサーとなり、OVAとして製作がスタートした。

企画当初のタイトルは「オメガゾーン」だったが、海外時計メーカーのオメガに配慮して「オ」をとって「メガゾーン」としたこと、脚本の星山博之氏と石黒監督が全共闘の時代への思い入れがあったことが東京が舞台になったり全体のストーリーに影響があったりしたかもしれないなど、当時の貴重な話が多く飛び出した。

同作には、石黒監督の「若い人にやりたいようにやらせてあげたい」という思いを反映して、板野一郎(アクション監督)や庵野秀明(原画)ら当時若手のそうそうたるアニメーターたちが多く参加している。三浦氏は、「プロデューサーとして優れたスタッフに多く参加してほしかった」とスタッフ集めに苦労したことを語りながら、若手スタッフがより面白いフィルムにするために絵コンテから変えようとすることを「ありがたいことなんですけど、そこが“ワナ”なんです」と、最初の脚本や設定から変わったところも多いと苦笑する。若い才能が集結して最初から全力疾走で製作していたが、柿沼氏は「冒頭で力を使いきっている感じがある」と分析しながらも、「それもいい」と懐かしそうに話す。

メカニックデザインを手がけた柿沼氏は、スケジュールがひっ迫するなか制作進行から「細かく描いていたら間に合いません」と言われ、ディテールをベタ塗りで処理しようとしていたことを振り返る。そんななか、作中のメカの設定について「銃身をまわしてもいいですか?」と制作進行経由で細かく確認をとろうとしてくるアニメーターがいるので、誰かと思って名前を聞いたら庵野氏だったというエピソードを明かし、会場をわかせていた。

日曜夜遅くの上映にも関わらず会場は満席。静かな熱気のなか、ファンは柿沼氏と三浦氏によるサービス精神たっぷりのトークを聞き入っていた。第35回東京国際映画祭は、11月2日まで開催。
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