2022.10.29 [イベントレポート]
「ウルトラセブン」55周年記念 鈴木清氏が語る特撮撮影の苦労&白石雅彦氏による見どころトーク
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「ウルトラセブン」撮影の鈴木清氏(左)と特撮研究家の白石雅彦氏

第35回東京国際映画祭ジャパニーズ・アニメーション部門に出品された「ウルトラセブン」55周年記念上映『特撮』が10月28日、TOHOシネマズシャンテで行われ、「ウルトラセブン」撮影の鈴木清氏と特撮研究家で脚本家の白石雅彦氏がトークを繰り広げた。

「ウルトラマン」シリーズを代表する一作としていまなお根強い人気を誇る「ウルトラセブン」は、1967年10月1日に放送開始。翌年まで全49話(ただし第12話は現在欠番)が放送された。東京国際映画祭では「ウルトラセブン」の中から、「対話」「特撮」「ヒーロー」という3つのテーマに基づき、厳選した12エピソードを4K上映する。この日は「特撮」という視点でセレクトされた『湖のひみつ』『ウルトラ 警備隊西へ 前後編』『超兵器R1号』の4作品が紹介された。

「当時弱冠25歳でした。ウルトラマンではキラキラ、セブンではギラギラ光っていました。55年たった今はよれよれです」と冗談めかして挨拶した鈴木氏は、「55年前にこんな日が来ると思っていませんでした。フィルムの質を落とさず、大画面に耐えられる映像にしていただき感激です」。白石氏も「昔はテレビでゴーストが出たり、ブラウン管の質も悪くて。21世紀のテクノロジーでこうやってスクリーンでみられるとは長生きしててよかった」と大スクリーンの4K上映を鑑賞した感想を語る。

鈴木氏は、特撮シーンの撮影について、「セブンでは機材が改革された。ウルトラマンは飛びものは竹ざおを使っていましたが、セブンではクレーンを使うようになりました。ウルトラマンは旋回がフラットだったのがセブンの飛行はダイブしています。また、ウルトラマンではスモークを使っていましたが、フォッグメイカーという新しい機械で、ドライアイスを使って下に這うようなけむりの効果を出せるようになった」とウルトラマンからウルトラセブンでの機材の進化について説明し、「ウルトラマンの時は試行錯誤で、苦労が多かった。セブンはルーキー脱皮で2年生になっているので、スタッフ全員の熱量が上がっていて、苦労はなかった。より突っ込んだ、凝った絵を撮っていこうと楽しんでいました」と同時の現場の空気感も振り返る。

「飾り込みについては、R1では墓地と花畑のように表現しています。いつも美術の池ちゃん(池谷仙克さん)と写真集などを参考にして、セットデザインを検討していました。R1は美しい地球を表現したいと、単純ですがお花畑を使いました」とこの日上映された『超兵器R1号』についてもコメント。

また、セブンになって、ウルトラマンよりもギミック感が強くなったとの意見に、「円谷英二さんが、サンダーバードがお気に入りで、発進のシーンを丁寧に撮ったのではないでしょうか。ウルトラマンとはここが大きな違いだと、楽しんで撮らせてもらいました。こうやって大きなスクリーンだと、ちょっとしたキャメラのぶれも見えるのでつらい思いもありました」と吐露する場面も。「ウルトラマンではセットの空バックの高さが非常に低く、いかにうまく撮るかに苦労したので、セブンではオープンで撮らせてもらうことが多かった。セットとオープンの差を気にして見てほしい」と撮影におけるセブンの見どころを紹介した。

そのほか、特撮の一番の苦労は「ピアノ線」と言い、またエピソードとしては、人体の中に入るミクロ化の表現のある「悪魔の住む花」で、「トンネル状で間接照明しか使えないので、ああいうセットになった。人体に入るわけですが、汚いところは見せずにきれいに撮りたいなという思いで撮りました」と様々なエピソードを披露し、ファンを喜ばせた。

「ウルトラシリーズ」に関する著書を数多く執筆している白石氏は、「ウルトラセブンはハイクオリティでハイセンスのドラマだと思う。でも当時はウルトラQとウルトラマンの人気に追いつかなかった。(著書では)それを検証したかった」と言い、「セブンに限らず、初期のウルトラはしっかりしたプロットがあるし、子ども番組ではあるが妥協した撮り方はしていない。そして、当時の熱気がそのままフィルムに収められていることが大きい。あの当時の子ども向け特撮のレベルではないことをやってのけた」とシリーズ開始から半世紀以上経った現在、今や世界的な人気を誇る「ウルトラシリーズ」の魅力を熱弁した。
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