2022.10.27 [イベントレポート]
ツァイ・ミンリャン&リー・カンション、『青春神話』上映でデビュー30周年を振り返る
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ふたりのデビュー作『青春神話』を上映

台湾のツァイ・ミンリャン監督のデビュー作『青春神話』(92)が10月27日、第35回東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門、ツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年記念特集で上映され、ツァイ監督と俳優のリー・カンションが観客とのQ&Aに応じた。

映画は台北の繁華街・西門町に集う若者たちを描いた群像劇で、1993年の第6回東京国際映画祭ヤングシネマコンペティションでブロンズ賞を受賞した。ツァイ監督は「ここに帰って来られて感動しています」と、久々の東京国映画祭への参加の喜びを述べ、「30年という時間はとても速かったです。そして10本以上の長編を撮れたことをとてもうれしく思っています。この『青春神話』を撮ったときに「映画を撮るのって難しいんだな、運が必要だ」と思いました。映画製作には天の時、地の利、人の輪が揃わなければならないとわかったのです。そして、心の中で10本撮れればいいなと密かに誓いました。今、その10本を超えて作品を撮れたので、これは神からのプレゼントだと思っています」とデビュー当時の思い出を感慨深げに語った。

ツァイ監督と同じく、『青春神話』で俳優デビューしたリーは、「私は変わりましたか? よりカッコよくなったように見ていただけるでしょうか?」と会場に問いかける。来日前にアメリカでの上映ツアーがあり、4つの都市を回ったと報告。その後の東京滞在の印象として「アメリカでは都市の活力を感じましたが、東京ってこんなに静かだったかな? と不思議に思いました。監督とも話しましたが、上映後の拍手が聞こえなくて。アメリカでは上映後10分くらい拍手が響き渡っていました。コロナ禍が私たちの距離を遠くしてしまったのではと思いました。今日は皆さんとの距離を縮められたらと思います」と日本のコロナ禍の影響を心配しながら観客に語りかけた。

久々に本作を見て、自分の青春時代の思い出がよみがえったという観客が中国語で感謝を伝え、当時はどのような気持ちで撮ったのか?とツァイ監督に質問。ツァイ監督は「私の名前をここで覚えていていただければと思います。青春時代は思い悩む時代で、いつも不安に取り囲まれて、絶えず出口を探し続けるもの。この30年で、私はまだこの映画の賞味期限が切れていないこと、こうやって新しい観客にも見ていただけることをうれしく思います。そして私の創作にずっとついてきてくださっている観客もいらっしゃいます。私の映画を見ていただければ、これ以上お話しすることはありません」と回答した。

また、自身のことを神話の英雄ナジャの生まれ変わりだという、本作の主人公シャオカンが30年後、どういう大人になっていると思いますか? という問いには「ナジャは子どもの神様です。この神は反逆精神を持った神で、絶えず現実に対して反抗心を抱いています。何歳になろうと、ナジャの心の中にはその精神が宿っていると思います。その神を眠らせようとしても、ナジャは現実に立ち向かって変えていきたい、そういう気持ちが続いていると思います」と語った。

この日はツァイ監督の誕生日で、映画祭から花束が贈られた。「私は皆さんのお幸せをお祈り申し上げます。楽しい気分で映画を見てほしいです、この世界がもっといい世界になるように、心から祈りたいと思います」とコメント。リーは「今年日本で映画に出演しました。『黒の牛』です。来年か再来年見ていただけると思います。蔦哲一朗監督はとても才能がある監督で、私は初めて他の監督の作品で主役を演じました」と『祖谷物語おくのひと』(13)が国内外で高い評価を受けた蔦哲一朗監督の最新作を紹介した。

ツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年記念特集では、中期の代表作、その後の実験的な作品を上映する。第35回東京国際映画祭は11月2日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
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