2022.10.29 [イベントレポート]
King Gnu井口理、役者として「やっとスタートをきれた」と手応え
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観客とのQ&Aに臨んだ井口理

第35回東京国際映画祭の「Nippon Cinema Now」部門で10月28日、日本映画『ひとりぼっちじゃない』が角川シネマ有楽町で上映され、主演の井口理(King Gnu)、伊藤ちひろ監督がQ&Aに臨んだ。

『世界の中心で、愛をさけぶ』をはじめとする行定勲監督作品、さらに『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』『東のエデン』など数々の名作を世に送り出してきた脚本家・伊藤ちひろが10年かけて書き上げた小説を、行定監督プロデュース、著者自身のメガホンで映画化した本作。人とうまくコミュニケーションがとれない不器用な歯科医ススメが、謎多き女性・宮子(馬場ふみか)に恋をするが、彼女を理解できずに思い悩むさまを描き出した純愛と狂気の物語だ。

この日の上映を途中まで、観客と一緒に鑑賞していた井口は、「皆さん疲れましたよね。音楽もあまりないし、皆さんに集中してくれという感じの映画なので、疲れたという感じは見ていて伝わりました」と呼びかける。そして、「本当は映画が始まる前にそれを言えば良かったですね。恋愛映画だと思って来た方は違う映画だと思うかもしれない。頭を使う映画でしたから」と続けた。

本作の主人公であるススメは、監督自身が望んだキャスティングだったという。「小説を書き上げて、これを映画化するという話になったんですが、脚本を書く前に井口くんには原作を読んでもらって。井口くんにやってもらえるなら映画化しようという感じでした」と述懐する。

どのようなところがススメ役にピッタリだと感じたのか聞かれた伊藤監督は、「以前に一度、ご飯会でご一緒したことがあって。わたしは行定(勲)さんの映画の『劇場』の時の井口さんのお芝居が好きだったから、その時に受けた印象が残っていて。この作品を映画化できるかもとなった時に、最初に頭に浮かんだのが井口くんだったということです」と説明。さらに、「井口くんとススメが似ていると思ったわけではないですけど、彼の繊細な細かい表現力とか、表情の機微を見てイメージが沸いたということです」と付け加えた。

本作の英語タイトルは『In Her Room』。伊藤監督はこのタイトルも気に入っているそうで、「これは調べてみてもらうと、その言葉の背景にいろんなことが隠されているんですが、すごくこの映画をひとことでまとめている。そのまま直訳してもそうだけど、その背景に隠れているものに関しても、まるでこの映画をそのまま表現しているようなタイトルだなと思って。気に入っています」と語った。

そんな本作に出演してみて、「僕も今までちょこちょこ芝居みたいな事をやっていたんですけど、なんか向いてないなとどこかで思っていたんですよ」と正直な思いを吐露した井口。「でも今回、この『ひとりぼっちじゃない』を通して、役と向き合うってこういうことなのかなとか。ススメという人間と向き合って、やっとスタートをきれたんじゃないかなと思いますね」と胸中を告白する。「僕は普段、歌を歌う人間ですけど、普段歌っている歌で、この映画で得たものを還元できるんじゃないかなと。撮影が終わってからだいぶ経ちますけど、今の歌に生きているなと思うし、普段歌っていることが『ひとりぼっちじゃない』に生きたんじゃないかなと思っています」と晴れやかな顔で語った。
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